- 考察(気付いた点など、推測も含む) -
主人公の名前がヤスオでガールフレンドがユキコ。
ヤスオは勿論「山田康雄」からとられており、ユキコは
ファーストシリーズで不二子の声優を務めた「二階堂有希子」からとられている。
「ルパンとは一体何者なのか」というテーマをはじめ
狙ってるお宝アイスキューブが実はプルトニウム(核爆弾)で、
さらにそれすらフェイクだったというのは押井守ルパンのプロットとそっくり。
他のルパン達の車を追い抜いていく「R-33」ナンバーのフィアットは
カリオストロルパンのフィアットで乗っているのはカリオストロルパンだと思われる。
同じく偽ルパン達の中にいる「一番有名で人気あるけど、結局何にも盗んでない」という
ルパンはカリオストロルパンだと思われる。
ユキコの「ルパンというのはみんながつくった幻想だと?」という台詞。
押井ルパンについて押井守自身がインタビューで語ってる「みんなが寄ってたかって
ルパンって幻想作ってただけだっていう話になる予定だった。」という部分に重なる。
紅屋の店主が初代ルパン、栗田貫一ルパンが2代目でヤスオが3代目候補。
2代目ルパンが日本の学校の教室を「懐かしい」と言っていることから
2代目は日本人か。
刀を研いでいるおっさんが初代五ェ門。現在は2代目。
エンディングで次の五ェ門を育ててる。
ユキコのおばあさんが初代不二子。現在は2代目。
可能性としてはユキコが3代目?
次元は初代のまま世代交代してないと思われる。
初代だと思われる人物は登場してないことと、
子供の壊れたマグナムを直した後の「おじさんなんかもう40年も使ってんだぞ。」
という台詞から世代交代してないことを示唆してる。
銭形も初代のまま世代交代していない。
次元と同じく初代だと思われる人物は登場してない。
また、「63歳の片山刑事より5歳年上」とはっきり劇中で言われており
銭形は68歳ということになる。
なぜ次元と銭形の2人だけ初代のままかというのは、
この2人だけ声優がファーストシリーズから1度も交代していないということをかけていると思われる。
(※後に銭形の声優は交代しているがこの作品が制作された2008年時点ではまだ交代していない。)
世代交代に関しては声優陣もそろそろ世代交代の時期なのかというメッセージも多少入っている気がした。
ルパンは一人ではないという設定について
TVシリーズ、TVSP、劇場版によって顔、性格、声も違っているということがネタ。
モンキー・パンチはカリオストロルパンについて、
「カリオストロルパンが一般的になっているけど、あれは宮崎さんのルパンであって、
僕のルパンじゃない、宮崎さんのルパンは優しすぎる」と語っている。
そして宮崎駿は「自分の描くルパンこそが本物で、ルパンは人殺しなんてしない、正義の味方であるべき」
というような発言をしている。
また、2ndシリーズの155話 最終回「さらば愛しきルパンよ」は宮崎駿が演出、脚本をしているが
(宮崎駿は2ndシリーズでは145話と155話の最終回だけ手がけてる)
この最終回は後半まで偽者ルパン一味しかでてこず最後だけ本物ルパン一味がでてきて
偽者ルパン一味をやっつけるというストーリーになっており
この内容からこの最終回は「自分(宮崎駿)が手掛けてないこれまでの2ndシリーズのルパンは全部偽者で
最後にでてきたルパンこそが本物である」というメッセージが込められていると言われており
宮崎駿もそれを肯定している。
本作では特にカリオストロルパンが目立っている。
そして、そのカリオストロルパンも偽者という位置づけであり
他のルパンから「お前なんか結局、何にも盗んでねぇじゃん。」と批判されている。
この部分はモンキー・パンチが「あれは僕のルパンじゃない」と発言していること
そして、ルパンファンの友人が「一般的にはカリオストロルパンがルパンっていう風潮があるけど
確かに名作なんですけど、ルパンファンからするとそれは違うんだよなぁ」と語っていて
このあたりはモンキー・パンチの発言そして、ファンの心情も示唆した演出になっている気がする。
- 上記を踏まえての感想 -
ネットなんかではかなり賛否わかれてたみたいたいだが、個人的にはかなり面白かった。
内容は、幻の「押井守ルパン」に影響を受けているというか
「押井守ルパン」がやりたかったのかなという印象。
「ルパンとは一体何者なのか」というテーマは勿論だし、狙ってるお宝アイスキューブが
実はプルトニウム(核爆弾)で、さらにそれすらフェイクだったというのも
押井守ルパンそのまま。
Green vs Red(緑ジャケ対赤ジャケ)という発想も押井守ルパンに
ついてのインタビュー記事から連想できる範囲。
押井守がそのインタビューで「今さら声のそっくりさんを使ってまでルパンを
見たいというファンの想いも度を過ぎる」というような発言をしてて、
ちょうどこの「押井守ルパン」のインタビュー記事を読んだ2002年に初音ミクじゃないけど
役者の声を録りこんで再現できる技術が開発されたというニュースを耳にしたというのもあり
この技術を使い、押井守ルパンを下敷にして「山田康雄ルパン vs 栗田貫一ルパン」とかできたら
面白いなぁと妄想したりしたんで、多分同じようなこと考えてたファンは多んではないだろうか。
実際、この「GREEN vs RED」の宮繁之監督も本当は「山田康雄ルパン vs 栗田貫一ルパン」
というのをやりたかったんじゃないかな。まあ、無理だけど。
そして、本編。
物語の冒頭から流れる「炎のたからもの」。
ここでなんかうっすら期待が高まる。
そして次のシーン。
「一体どいつか本物なんだ、ルパン個人のプロファイリングなのに全部、顔も手口も違うじゃねえか」
という台詞の後に歴代 TVシリーズ、TVSP、劇場版のデザインのルパンの手配写真が連続して流れていく。
このシーンまで見て、この作品が「ルパンとは何者なのか」というメタフィクション
をテーマにしようとしているんだろうという方向性がみえて、かなり期待感がこみ上げてきた。
散りばめられた歴代ルパンシリーズからのオマージュや、メタ的なメッセージ
は思わずニヤリとさせられる。
ストーリーは時系列が入れ替わってたり、ボヤかされているシーンもあって
一度見ただけでは理解できない部分が多くわかりづらかった。
また、ローガンという人物の掘り下げ等、回収できてない伏線がちらほら目立つ。
ただ、そこを差し引いても「ルパンとは一体何者なのか」というテーマに
挑戦したのは評価できるし、正直ワクワクした。
まあ、この傑作になる可能性のあったネタをここでやられてしまったという
残念な気持ちも少しあるんだけど。そんなことを言ってもしょうがないな。
【参考記事】
⇒ 幻の押井守ルパンは「虚構を盗む」はずだった(押井ルパン資料2)
⇒「カリオストロ」は本来のルパンじゃない(モンキー・パンチ)
・新ルパン三世の最終回「さらば愛しきルパンよ」における宮崎駿監督の真意(別サイト)
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