かなり久しぶりに拝見。
今回真剣に見返してみたんだが、よくこんなのやったなと思う程キツイ内容。
ただ、それでも名作だし好きな作品。
というわけで久々に見て、色々思ったこととか。
まずキャラクターの作画。
原作のイメージは崩さずに明らかに原作よりも
完成度の高い高田明美のキャラクターデザインは見事。
そしてテレビシリーズからさらにブラッシュアップされている
作画のクオリティの高さと安定感が素晴しい。
まどかが可愛すぎる。
キャラクターデザインの高田明美の功績はもちろんだけど
作画監督がいい仕事してるように思う。
あと、エンディングを見ると仕上が京都アニメーションらしいので
それも理由にあるのかもしれない。
作画に加えて演出、BGMもよい。
作画、演出、BGMがこのシリアス内容に物凄くうまくシンクロしてる。
曲に関しては主題歌である和田加奈子の「あの空を抱きしめて」が名曲。
この作品の為にあると言ってもいいくらいマッチしてる。
そして、この作品を好きな一番の理由。
それは、真っ向から三角関係の決着を描いていること、
同時にこの「あの日に~」のテーマが「作品へのアンチテーゼ」
であり「お前ら現実にかえれ」的メッセージを含んでいること。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」をはじめ
エヴァの旧劇場版、クレしんオトナ帝国の逆襲等
好きな作品には少なからず入っているテーマの1つ。
多分この作品は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」の影響を結構受けていると思われる。
記憶違いかもしれないけど、監督の望月監督がこの「あの日に~」は「ビューティフル・ドリーマー」を意識したとかって語ってるのを何かで見たような気がする。(間違ってたらごめんなさい。)
この「あの日に~」については原作者のまつもと泉は
否定的な立場を公言しており、原作ファンにもあまり好まれて
いない。この点においても「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
と同じだと言える。この「あの日に~」が「きまオレ」のなかで唯一
DVD化していないのは原作者の反対があるからといわれているが、
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」もBlu-ray化が中止になったのも
原作者がBlu-ray化に否定的だからだと言われている。
(※その後2015年1月にBlu-ray発売されました。)
「あの日に~」が「きまオレ」へのアンチテーゼになっていることについて。
「きまぐれオレンジ☆ロード」はまつもと泉原作の
春日恭介、鮎川まどか、檜山ひかる、の三角関係を描いたラブコメ漫画。
この作品は3年以上も続いている現実ではあり得ないであろう
ユートピア的三角関係、そしてプラスアルファ
春日恭介(春日一家)の超能力で成り立っている。
このユートピア的三角関係と超能力という非現実性が
作品の核になっていると言っていい。
「あの日に~」はその核であり嘘でもある非現実性を排除し、
作品の含む問題点をえぐり、現実だったらこうなるということを描くことで
「きまオレ」の世界を完全にぶち壊している。
まさに作品へのアンチテーゼがテーマ。
演出、台詞はほぼそういう意図で埋め尽くされている。
劇中、恭介はもちろん春日一家が超能力を使うシーンは一切ない。
あきらかに意図的に排除されている。
ひかるの「あたし、知ってたもん、春日先輩が
ずっと前からまどかさんのこの好きだったの。」
というこの作品を象徴する台詞。
ひかるが恭介とまどかの気持ちには気付いていないからこそ
成立していた三角関係、「きまオレ」の世界を完全に否定する台詞になっている。
普通なら3年以上3人でいて気付ないわけないだろうという
こということなんだろう。
そしてシリーズではできなかった三角関係の決着。
これをやってしまった時点で「きまオレ」は成立しなくなるわけで
ラストでしかできない止めのエピソード。
もちろん恭介はまどかを選ぶ。
別れを告げた後の恭介とそしてひかるの痛々しいやりとり。
これはダラダラとあいまいな関係を続けてきたツケみたいなものを
ちゃんと描きたかったというような気がする。
あと恭介とまどかがデートで見ている映画
「タッチ 背番号のないエース」のシーンがまさに
「きまオレ」と重なるようになっててあざとい
というかよくやるなぁと思った。
以下、劇中劇「タッチ 背番号のないエース」のシーン。
南 :「バカっ。」
和也:「えっ。」
南 :「なんで、そんなこと考えるのっ?
南はかっちゃんもたっちゃんも好き。
小さいときからいつだって3人一緒だったじゃない。
これからだってずっと一緒。それでいいじゃない。」
和也:「これからもずっと。」
南 :「そう、ずっとずっと。ずっと。」
3人の性格の変化について。
ファンの間でこの「あの日に~」では恭介とまどかの性格が原作や
これまでのシリーズと違いすぎる、2人ともひかるにあんなひどいことは
しないというような批判がある。
確かにこの「あの日に~」では3人の性格がかなり
極端になっているような印象を受ける。
多分それは「きまオレ」における問題点をえぐるという目的で
作品における3人の性格、キャラクターというものをわざとわかりやすく
極端に強調し、表現した結果だという気がする。
「あの日に~」の制作者視点での3人のキャラの解釈だとも言える。
春日恭介。
優柔不断で状況に流されてばかり
まどかに好意をよせているにも関わらず、3年以上ひかるとの
関係をあいまいにしてきた全ての元凶。
劇中、流されるままにひかるとキスしたり
ファーストフード店で店員に「ご一緒にポテトはいかがですか?」
と言われて「あっ、ああ、じゃあポテトもください。」というとこは
正にそういうことだろう。
鮎川まどか。
ひかるに気を使っているというのもあるだろうが
半分は言い訳で、恭介は自分のことが好きだと分かっているし
自分からは結局何しないで、それでも恭介を自分のものにするズルイ女。
恭介のキスは拒むし、
「春日君の気持ちの問題なの」と全てを恭介になげる。
恭介とひかるが修羅場になってるのを知り
「春日君のこと責めないよ、あたしまで責めたら
春日君気持ちのやり場がなくなっちゃうもんね」
という発言なんてそれはないだろうと。
ひかるのまどかに対する
「まどかさん何もしないでずるいです。
まどかさん、先輩の為に今まで何かしましたか? あたしは何でもできますよ。
先輩の為なら何だってできます。」
という台詞は明らかにまどかをそういう風に描こうとしているし、
ひかるというフィルターを通した制作者の心の声なのだろう。
檜山ひかる。
恭介の気持ちもあまり考えずにとにかく積極的な女の子。
まどかヒロイン視点だとシリーズ中は少しウザくすら感じていた。
その延長、強調した結果があのストーカー行為ということだろう。
ただ、個人的にはまどかヒロイン視点なんだけど
それでも、恭介に別れを告げられた後のひかるは可哀想だし見てて辛過ぎる。
恭介に「鮎川が好きだから、君とはもう会えない」と
別れを告げられた後、完全にストーカー状態になるひかる。
物語終盤、泣きながらひかるが恭介に掴みかかって
「わたし、先輩のこと全然あきらめられないもん。
もう、わたしのこと全然好きじゃないんですか? 先輩にとってわたしは
一体なんだったんですか? 答えてよー!」と言うとこは
本当につらいシーンだし「きまぐれ☆オレンジロード」が終わったと思った。
ひかるへの救いについて。
この作品に関する見解として
全く救いのない作品で、ひかるが可哀想過ぎる、
エンディング後のシーンのみ少しだけ救いになってる
というような感想が多い気がする。
実際、最近まで自分も同じように思ってた。
でも、改めて見直して、ちょっとそれは違うような気がした。
この作品は「きまオレ」へのアンチテーゼであると同時に
実のところちゃんとひかるへの救いを描いてるんじゃないかと思った。
結局のところ恭介とまどかが両思いであることはわかりきっている
このいびつな三角関係という幻想からの解放であり、そして救い。
少なくとも制作者としてはそういう意図があったように思う。
本作のヒロインは誰が見てもひかるだろう。
何もしないまどか。
まどかに尻を叩かれて、ひかるに別れを告げただけの恭介。
それに対して
恭介とまどかの思いを知っていたにも関わらず
それでも逆転できると信じ、ずっと明るく努力してきたひかる。
恭介、まどかに全てをさらけ出して思いの全てをぶつけるひかる。
別れを告げられてもそれでも最後までみっともなくあがき、もがくひかる。
このあたりは確かにひかるは可哀想だし見てて辛いんだけど、
それと同時に作り手は完全にひかる視点でひかるへの愛というか
救い、開放というそういうメッセージがあるように感じた。
きまぐれオレンジロードの世界を壊さないためには恭介とまどかの気持ちにずっと気づいてなくて最後でやっと気づくことにしないとダメなんだけど、それだと、その為ににひかるちゃんを犠牲にしてる気がするんだよね。
それをこの「あの日にかえりたい」で明かされたようにひかるちゃんはずっと知ってたってなると今までの世界観ぶち壊しなんだけど、普通に考えれば何年も3人一緒にいて気づかないわけないだろってのもあるし、納得できる答えなんだよね。原作では最後の最後でやっと気づくんだけど、そっちの方が残酷だし、ひかるちゃんのことバカにし過ぎなんじゃないかなって。
「きまぐれオレンジロード」のひかるちゃんってまどか派からすると空気読めなくて邪魔ばっかりしてちょいウザキャラなんだよね。でも「あの日にかえりたい」でずっと2人の気持ちを知ってたけど逆転する為に明るくバカなピエロを演じ続けてたってなるとひかるちゃんの見え方が全然変わるんだよね。
まあ、架空の物語なんだからわざわざ「現実に帰れ」的テーマをやる必要があったのか。
ユートピア的三角関係が続いたままでもいいじゃないか「きまオレ」でオナニーするなというファンの言い分もその通りではあるけど。
⇒ 『あの日にかえりたい』余話 (望月智充 監督のブログ)
この作品だけDVD化されてないことについて少し語られています。
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